雀聖アワー

《追う者》と《追われる者》

2015年11月17日。3カ月間にわたって行われた予選を勝ち上がったアマチュア9人が、プロにチャレンジする日。参戦プロは井出洋介プロ（麻将連合μ）、新井啓文プロ（最高位戦日本プロ麻雀協会）、大崎初音プロ（日本プロ麻雀協会）の3人。各団体で頂点となるタイトルを戴冠してきたプロたちである。

的確な山読みと押し引きで第38期最高位を戴冠した新井啓文プロ

第9・10・12期女流雀王ほか数々のタイトルを持つ大崎初音プロ

決勝大会の予選は3回。その3回は、アマチュア9人が各プロと必ず同卓する。そしてプロも含めた12人の中から勝ち上がった4人が決勝卓へ進出。これまでにプロがひとりも決勝に出場しなかったことはない。しかし今大会。決勝卓に進んだ4人全員がアマチュアという波乱。たとえプロであっても、勝ち上がれないことは起こりうる。これもマージャンというゲームの摩訶不思議なところ。したがって決勝卓は、プロ3人が見守る格好となった。

予選の得点を持ち越したままの決勝戦。したがって《追う者》と《追われる者》に分かれる。予選3回戦をオールトップという完璧なゲームメイク。総合得点を16万点とした山下壮一郎選手が1位通過。2位通過の三浦雄樹選手とは約3万5千点差。3位通過の藤本武宏選手とは約5万5千点差。4位通過の金澤喜重選手とは約5万8千点差。

《追う者》となる2位以下の選手達の戦い方はひとつ。目標＝先行く者を捉え、その先を目指す。

《追われる者》の戦い方はふたつ。追ってくる者が、諦めるぐらい圧倒的に攻め抜くのか。それとも。攻めよりも守りを重視し、逃げ切るのか。

プロ3人が見守る決勝卓

東1局。金澤選手が親の先制リーチをかいくぐりながらツモ。1300／2600から決勝戦が始まった。親連荘が一度も無いまま迎えた南場。持ち点は4人とも2万点台。点差は拮抗し、予断を許さない。山場となったのは南3局2本場。藤本選手の先制リーチに、山下選手が追っかけリーチ。さらに親の金澤選手からもリーチの声。この3人リーチを制したのは金澤選手。4000オールをツモあがる。迎えた南3局3本場。金澤選手は配牌で自風が暗刻。ドラ含みターツと出来メンツもひとつあり、一気に逆転優勝の可能性が高まる。しかしこの局は藤本選手がアガり、金澤選手の親が流れる。そして迎えた最終局。条件戦に強いプロ達が、各選手の条件を伝えてくれた。

《追う者》すべてに優勝の可能性は残った。そして手牌を伏せれば優勝が確定する《追われる者》。そんな状況下。《追われる者》はアガりを選択し1本場とした。《追う者》が諦めるぐらいの圧倒的な攻めの姿勢を見せたのだ。

この選択は《追う者》にもう一度チャンスを与えることにもなる諸刃の剣。なぜ手牌を伏せなかったのかと思う打ち手もいるだろう。だがその姿勢を見せたことに価値がある。

以前、山下選手は言っていた。「チームがらくた総帥・前原雄大プロのように攻め続けて勝ちたいんです。横幅だけは似ている自信があるので（笑）。だから小雄大（こゆうだい）って呼んでください！」

対局後。大崎プロは言った。「山下さんは黒孔雀杯に参加してくれたとき、本来の実力を発揮出来なかったんです。だから今日は、お母さんのような気持ちで対局を見守っていました（笑）。おめでとうございます！」

プロ3人を抑えての優勝。さらに、うら若きお母さんまで誕生。小雄大がひとまわり大きく見えた。

 

優勝・山下選手、準優勝・金澤選手、第3位藤本選手を囲んで

 

順位	CODE	氏名	合計	1回戦	2回戦	3回戦	4回戦
第1位	0005	山下壮一郎	176100	65700	47600	46700	16100
第2位	0024	金澤喜重	155800	67100	17200	18200	53300
第3位	0025	藤本武宏	136100	19100	53300	32300	31400
第4位	0047	三浦雄樹	123900	200	70100	54400	-800
第5位	1001	井出洋介Ｐ	93400	45000	13300	35100	0
第6位	0040	中西賢司	89200	32500	37300	19400	0
第7位	1003	大崎初音Ｐ	74100	15100	25800	33200	0
第8位	1002	新井啓文Ｐ	59400	24900	32900	1600	0
第9位	0053	高島直也	53000	-6500	3700	55800	0
第10位	0043	吉田宏	37700	14500	1800	21400	0
第11位	0054	五十嵐優	32900	35700	6200	-9000	0
第12位	0052	中村博志	-31600	-13300	-9200	-9100	0

 

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