雀聖アワー

《プロとアマチュアの意識差》

日中の最高気温は31.9℃。21時過ぎだというのに、外では蝉が鳴いている。ギャラリーの熱い眼差しが注がれている決勝卓。静寂が破られた。

 

 

「リーチ」。

決勝戦東2局。西家の発声に観戦者が息を飲む。リーチ者は、リーチを多用しない打法を信条とする井出洋介プロ（麻将連合μ）である。その打法の理由は、リーチをするとそこで思考が停止してしまうからと聞いたことがある。

「ロン。1万6千」。

リーチ、一発、中、白、トイトイ、三暗刻。テンパイ即リーチではなかった。テンパイから2巡後のリーチ。ツモれば四暗刻。リーチをしなくても出アガリで中、トイトイ、三暗刻で満貫は確定していた。

会場から歓声が湧きおこる。「すげぇ」と思わず呟いた者もいる。その後も親番で満貫をロンアガリし、差を広げる井出プロ。

決勝卓に残ったメンバーは、予選1位通過・藤本武宏さん。2位通過・新井啓文プロ（最高位戦日本プロ麻雀協会）、3位通過・井出洋介プロ、4位通過・大崎初音プロ（日本プロ麻雀協会）の4人。アマチュア1名とプロ3人。各プロは団体が異なるので、直接対局することはほぼ無い。したがって、目には見えないものの、プロ同士の意地もぶつかり合う。

「予選が終了した時点で、トップの藤本さんとの点差は3万900点。だからあの手はリーチが必要だった」「2巡回したのは、河に待ち牌の白とピンズの１が１枚づつ出たので、山にある。もしくは持ってきた人は止まらない牌だと判断したため」と、対局後に振り返る井出プロ。

大崎プロもリーチ、一発、ツモ、イーペーコーを井出プロの親番にかぶせて反撃開始。藤本さんも、大崎プロ、新井プロの2軒リーチにひるむことなくドラ牌をツモりあがる。その後、新井プロもリーチ、ツモ、タンヤオ、ドラ3の跳満をツモアガリ、混沌とした状況に。迎えた最終局、井出プロの親番。藤本さんは井出プロを満貫直撃か、跳満ツモで優勝できる位置にいた。しかし、プロの壁は厚かった。井出プロの2連覇で決勝卓は幕を下ろした。

「点差を明確に意識したゲームメイク」。

井出プロ連覇の要因はここに尽きる。実はこの意識が如実に出たのは、決勝戦ではなく、予選3回戦にあった。この時点で井出プロは総合6位。総合2位だったアマチュア・堀越さんと同卓しており、堀越さんに3万7900点差をつけて終わることが出来れば決勝進出の可能性があると考えて対局に臨み、それを完遂した。堀越さんに3万9200点差。微差ながら＋1300点差をつけ、決勝に進出していたのだ。

もちろんそう考えたからといって、常に思い通りにいくわけではないのがマージャンである。しかし目標を明確にしてから対局に臨めるかどうか。ただアガればいい。ただ勝てばいいではない、さらなる高みへ。マージャンの持つ豊かなゲーム性を、身を持って教えてくれた。

そんなプロたちに挑戦できる喜び。会場にいたすべてのアマチュアの想いを感じとったのか、再び蝉がけたたましく鳴き始めた。

 

 

順位	CODE	氏名	合計	1回戦	2回戦	3回戦	4回戦
第 1位	1001	井出洋介Ｐ	167800	35500	18000	46500	67800
第 2位	0025	藤本武宏	156400	49900	45600	35400	25500
第 3位	1002	新井啓文Ｐ	119000	32900	55700	15900	14500
第 4位	0042	堀越健太	98700	16500	74900	7300	0
第 5位	1003	大崎初音Ｐ	92200	34000	25500	40500	-7800
第 6位	0047	三浦雄樹	71800	-7400	34100	45100	0
第 7位	0005	山下壮一郎	65000	-100	2300	62800	0
第 8位	0029	窪田陽子	64000	46200	14200	3600	0
第 9位	0049	三森重信	64000	23500	12300	28200	0
第 10位	0043	吉田　宏	54100	50700	-14600	18000	0
第 11位	0003	間宮久美子	50600	-3700	37400	16900	0
第 12位	0053	高島直也	-3600	22000	-5400	-20200	0

 

【雀聖アワー杯】とは？

予選大会日時は毎月第3日曜日。3カ月間にわたって行われる予選大会を勝ち上がれば（2予選以上の出場が条件で、予選成績ベスト2を集計し、上位9名が本戦進出）プロと同卓できます。参加条件は、マージャンが好きな方。点数計算に自信が無い人でも、スタッフがいるのでご安心を。3人のプロと真剣対局してみたい方は、こちらからお申し込みください。